ウォッチと飛行機にスケールの違いがあるとしても、私たちはこの2つのものが、機能や条件、プロセスにおいて、極めて似ていると考えています。 完成品の発表までには、どちらも研究開発に膨大な時間が費やされます。 超軽量で極めて耐久性のある素材は、堅牢性と性能をもたらします。 また、精度の高い構築的なデザインによって、意図的な振動を吸収できます。 さらに妥協を許さない厳正な品質保証により、耐久性が約束されています。 入念な手続きを踏み、緻密な努力を重ね、はじめて最高品質のための条件が整うのです。 さらに設計によって卓越の製品ができ上がり、絶えることのないひらめきの源となるのです!
RM 62-01 トゥールビヨン バイブレーションアラーム ACJ
手巻きトゥールビヨンムーブメント、時・分表示、オーバーサイズデイト、UTC(協定世界時)、AM/PM インジケーター、ファンクションセレクター、パワーリザーブインジケーター。
振動アラーム機能、ON/OFF インジケーター。
チタンとカーボンTPT®製、30本限定。
約70時間(± 10%)、11時位置にインジケーター
地板とブリッジの素材はグレード5のチタンで、これは生体適合性と耐食性に優れた極めて硬い合金であるため、輪列がスムーズに作動します。 合金の組成は、チタンが90%、アルミニウムが6%、バナジウムが4%。 ブラックPVD処理を施したグレード5チタンを用いることで、組み立て全体の剛性が強化されるとともに、完璧な平面性得られます。 この組成によって素材の機械特性がさらに強化されるため、航空宇宙産業や航空産業、自動車産業でこの合金がよく使用されています。
スケルトン加工が施された地板とブリッジには徹底した検証テストが課され、最高の強度が実現されています。
この特製アラームは、リシャール・ミルとオーデマ ピゲ・ルノー エ パピが開発した新しい複雑機構で、5年に及ぶ研究開発を経て世に送り出されました。 ウェイトの回転によって生まれる振動シグナルを、設定した時間に自動的に始動させるという原理に基づいて動作します。 ホワイトゴールドのシングルピースを機械加工したウェイトは、5,400 rpmで振動するよう精密調整されています。
アラームは3時位置のファンクションセレクターを用いて、ダイヤル上の2針で最大24時間、分単位での調整が可能です。 さらに、5時位置にON/OFF インジケーターが備わっています。
専用香箱の振動は、最大12秒間持続します。 8時位置のプッシュボタンを12回押してアラームの巻き上げが完了します。 パワーリザーブは、7時位置の目盛りに表示されます。
サルヴァドール・アルボナ(ムーブメント担当テクニカルディレクター)
「このプロジェクトは極めて複雑で、いわばマラソンのようです。 インスピレーションの源は、私たちが「5本脚の羊」と呼んでいる、極めて洗練された他のムーブメントです。例えばRM 039 トゥールビヨン アヴィエーションやRM 25-01 アドベンチャー シルベスター スタローンなどです。 こうしたタイムピースは私たちにとって全く新しい領域となるデザインで、開発に何年もかかります。 振動アラームはそれまで存在しなかったので、非常に長い実験段階がありました。
このタイプのムーブメントを一緒に開発、構築しているオーデマ ピゲ・ルノー エ パピ(APR&P)とともに近くで協力したことが、このプロジェクトでは大いに役立ちました。 ムーブメント全体を構築する前には、様々な技術的な問題がありました。これはムーブメントの心臓部で起こる振動に関するもので、必ず解決する必要がありました。 」
「RM 11-03と同じ大きさの限られたボリュームに多数の部品や機能を収めるため、4つの部分的な試作品、設計図考案や空間的制約のため膨大な作業を要しました。 816個の構成部品、2つの香箱、7本の針、11種類の機能とトゥールビヨンキャリッジを収めるスペースを見つける必要があったのです。
私たちは多大な時間をかけて、「ネジはすべての振動に耐えられるのか?」という問題について熟考しました。この点について答えを出すだけではなく、長期に渡って耐え得ると確信を持つ必要もあったのです。 理論的に言えば、振動はムーブメントの敵です。 トルクドライバーを用いて複数の締め付け作業が行われ、シミュレーションと検認試験の結果に基づいた、極めて精密調整された力をはじき出すことができました。
また、ムーブメントはChronofiable®A8認証を受けており、6ヶ月にわたる耐衝撃性のテストにより、ネジが1本も緩まないことが証明されました。 実験は50gと100gで行われ、ムーブメントは24時間繰り返し小さい衝撃にさらされました。 これによってある種のネジに特別な仕上げをすることを決め、最適なトルクを確定できたのです。」
5ポジションのファンクションセレクター
リューズの中央に配置されたプッシュボタンを押すと、巻き上げ、時刻合わせ、アラーム設定、UTC(協定世界時)設定、ニュートラルの5つの機能のいずれかを選択できます。
3時位置のディスクの明るい背景色に、N(ニュートラル)-W(手巻き)-T(時刻合わせ)-U(UTC針の設定)-A(アラーム設定)の選択した機能が表示されます。
AM/PM インジケーター
6時位置のディスクインジケーターで、表示時間が午前(AM)または午後(PM)かが読み取れます。
オーバーサイズデイト表示
12時位置の下にある赤い輪郭線で囲まれた横長の表示窓に日付が表示され、日付が変わる時はほぼ瞬間的に切り替わります。
可変慣性フリースプラングテンプ
9時位置のフリースプラングテンプは、衝撃やムーブメント組み立て時または分解時でも優れた信頼性を確保し、適切な時間表示を保つことが可能です。 緩急針をなくして4個の調整ネジを採用した結果、より正確に何度でも歩度を調整できるようになりました。
セントラルインボリュート歯形を採用した香箱の歯車と三番車カナ
セントラルインボリュート歯形と圧力角20°を採用した歯車により、回転効率が向上、軸間に生じるばらつきが補正されます。その結果、優れたトルク伝達効率と大幅な性能の向上につながります。
ムーブメントの特徴
-ムーブメント直径:31.92 mm x 31.99 mm
-厚さ:7.75 mm
-トゥールビヨン直径:12.30 mm
-テンワ直径:10.00 mm
-石数:77
-テンプ:グリュシデュール®製、2アーム型、4個の調整ネジ
-慣性モーメント:10mg.cm2、リフトアングル 53º°
-振動数:21,600振動/時(3 Hz)
-ヒゲゼンマイ:ニヴァロックス®によるエリンバー
-耐震装置:KIF エラスター KE 160 B28
-ニッケルフリーのクロニファー®製香箱真(DIN x 46 Cr 13 + S)は、以下の特性を有しています:耐錆性・耐磁性を備え、熱処理に最適
チタンとカーボンTPT®製のケース
ケースバックとベゼルは、ポリッシュ加工とサテン仕上げを施したグレード5チタン製の1つ目のベゼル、そこに固定された厚さわずか1.80 mmのカーボンTPT®製の2つ目のベゼルで構成されています。 このハイテク素材は、カーボンファイバーから得られた600もの平行繊維層から成ります。 厚さ30ミクロン以下の層を、ブラック樹脂に浸してから 特殊な機械で各層の繊維の方向を45度ずらしながら織り込まれています。 さらにこの複合素材は、航空産業部品製造で用いられるような高圧窯の中で6気圧の圧力下で120°Cで加熱され、その後リシャール・ミル社で機械加工されます。 機械加工の段階ではカーボンTPT®の多くの層が露出します。すると、表面にランダムなダマスカス模様が形成され、それによって一つひとつの時計に独特の個性が生まれ、ユニークピースに仕上がるのです。
ミドルケースとプッシュボタンもカーボンTPT®で制作され、マイクロブラスト加工とポリッシュ加工を施したグレード5チタン製の補強材が支えています。 ケースの組み立てには、20本のグレード5チタン製トルクセット®ネジと、316Lステンレススティール製の耐摩耗性ワッシャーを使用しています。
ケース用トルクセット®ネジ
トルクセット®ネジのヘッドを特徴づけるプロペラのブレードのような4本の溝は、カーブを描きながら十字穴の中心に収束しています。 航空産業で用いられるこのネジは、トルクを最適にコントロールし、伝達します。 さらに、組み立てと分解の際、従来のプラスネジより優れ、あらゆる条件下での完璧なポジショニングを保証します。
トルクリミッティングクラウン
リューズは特別な安全システムを搭載しており、巻き真の損傷や圧力のかけ過ぎを引き起こす恐れのある、過度の巻き上げを防ぎます。
仕上げ
-手作業によるポリッシュ仕上げが施された面取り部分
-手作業によるポリッシュ仕上げの係止部
-サンレイブラッシュ仕上げのブリッジ
-サファイアマイクロブラスト加工を施した切削部分
-ラップ加工およびポリッシュ仕上げの接続部分
-艶出しした軸
-サファイアブラスト加工を施した表面
-手作業による面取りと研磨
-ダイヤモンドツールによる凹面面取り
-サーキュラー仕上げの表面
-ロジウムメッキ加工(歯をカットする前)
-歯の形状と性能を維持するため、加工後の処理は最低限に留める
その他の特徴
この香箱は以下の長所を備えています:
主ゼンマイの周期的な張り付き現象を大幅に減少させ、性能を高めます。
・パワーリザーブ、性能、均一性の理想的な比率を採用、主ゼンマイは優れた三角曲線を有しています。
この機構により、特に巻き上げの開始時に、巻き上げ効率を向上(約20%)させることができます。 またこれにより、主ゼンマイの張りが効率的に配分されます。
これにより、組み立ての際にネジの締め付けトルクを最適に制御することができます。 組み立てや分解時にほとんど影響を受けないため、理想的な経年変化が保証されています。